第16回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞受賞作である『オーパーツ 死を招く至宝』が文庫版となって登場しました。
オーパーツ鑑定士の古城深夜と、彼と瓜二つの容姿をした鳳水月のふたりを主人公としたドッペルゲンガー探偵物語となります。
全4編とエピローグからなる構成で、それぞれ物理トリックを駆使した密室殺人が起きて、深夜と水月のふたりが軽やかに解決していきます。
登場人物はひと癖ふた癖ある人物が多く、軽いノリでとても読みやすかったです。
特に深夜と水月のドッペルゲンガー漫才は随所に現れ、軽口の応酬や皮肉、心の声でのツッコミまで多彩で、さっくさくと読めるのはこの軽快なやり取りによるところが大きいですね。
第4話を除く3編は密室殺人事件となっており、それぞれが物理トリックを駆使しています。
その第4話もまさかのトリックなので、読んでみると「そう来たか!」となると思います(^^)
この第4話だけが受賞後に完全に書き換えた話なので、設定やトリックが奇想天外になっているのは編集も入りしっかりとダメ出しをしたからの出来なのでしょう。
元々はグリム童話ネタの連続見立てだったようで、作者のオーパーツの知識や恐竜に対する造詣の深さを思うと、幻の4話もちょっと読んでみたい気持ちもあります。
難点ってほどではありませんが、『オーパーツ 死を招く至宝』でちょっと気になる部分は、まさにこの造詣の深さの部分。
本筋にはあまり関わらない部分も含めて、トリックとの関連性を埋め込むためにものすごい情報量を主要キャラクターがやたら細かく語ります。
ひとつひとつのオーパーツに関するうんちくはタイトル通りだからいいとして、3話の恐竜の話の長さはとある登場人物の設定として使っているようですが、さすがに長すぎな気はします。
これらのうんちくや漫才部分、そして肝心要のトリックを含めて作品の魅力と言ってしまえば魅力的なので、全編通して作者の知識をたっぷりと受け止めるように読むのがいいと思います。
エピローグでは、それまでの4編が実は――という形のヒキで終わっています。
続編も書いているということなので、「本編でふたりの主人公が気に入った!」「もっと昔ながらの物理トリックの話を読みたい!」という場合は、続きも待ち遠しくなるかもしれませんよ?(^^)
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