【感想】『最後の医者は雨上がりの空に君を願う』(著:二宮敦人) 3人の死に何を想い、何を学ぶのか。

【感想】『最後の医者は雨上がりの空に君を願う』(著:二宮敦人) 3人の死に何を想い、何を学ぶのか。

二宮敦人さんの人気作品の2作目で、ふたりの医師が主人公の物語【最後の医者は雨上がりの空に君を願う】は上下巻の構成ながらも、一気読みに耐える圧倒的な文章を堪能できます。


大病院の跡取りであり、患者の生命を救うことに全力を注ぐ医師・福原雅和。

患者の望みを聞き届け、死を選ぶ権利さえ尊ぶ「死神」の異名を持つ医師・桐子修司。


今シリーズでは以下の3つの章で、ある患者の闘病と死を通じてふたりの考えと葛藤、そして成長が描かれています。


・とあるチャラ男の死

・とある母親の死

・とある医者の死


以下に簡単なあらすじと感想を書きます。


(※本編のネタバレを含んでいますので、未読の場合は先に本編を読んでからご覧ください)

とあるチャラ男の死では、桐子と福原の治療方針の対立と重なるように、お互いが受け持った患者であるチャラ男こと駿太とその元恋人の美穂がHIVウィルスに感染してからどう生きてきたかが描かれる。

駿太は診察も治療も拒否し、やがて破滅の道を歩き、最後には生命を落としてしまう。

美穂は生きる目的を持ち、強い意志で的確な処置をおこない、やがて新しい恋人ともに生きていく未来へと繋がった。


必ずしも治療の拒否がいい結果を生むわけではない。治療をちゃんとしたほうがいい、という福原が正解であったような展開となっている。

ここの対比とその結果が、最後のとある医者の死へと繋がっていく。




とある母親の死では、少年時代の桐子が福原の母親となる絵梨と出会い、彼女が癌と戦い、どう生きて何を残していったかが描かれる。

なぜ桐子が本人の意思を尊重するのか、そしてなぜ福原が患者を救うことに周年を燃やすようになったのか。

お互いの軸となる考え方が、この絵梨の闘病と死により固まっていく。


「あきらめてもいいんだよ」絵梨の残した言葉が桐子のその後を決めた。

闘って闘って、それであきらめてもいい。でも、それで自分の価値がないと思ってはいけない。その時は周りを良く見てほしい。

桐子は自分の母親がいかに自分を大切にしてくれていたかを今更ながら悟り、一度はあきらめていた生きることを取り戻した。


福原は父親の絵梨に対する考え方が受け入れられず、父親と衝突し、やがて救えるものは必ず救うという強固とした意思を作り上げた。

父親との確執は、最後のとある医者の死へと繋がっていく。




とある医者の死では、福原の父親である院長の欣一郎が認知症となったことで、福原が父親の治療を桐子に押し付けることで話が進んでいく。

懸命に欣一郎と対話を続ける桐子だが、福原は父親と幼い頃の確執があったため、治療にはまるで協力的ではなく、むしろ早く死んでもらったほうが自分が院長の座につけると考えていた。


だが、桐子が欣一郎が話したことを記録していく内に、欣一郎がなにを考えていたのかを徐々に掴んでいく。

桐子が福原にそのことを伝えようとするも、父親に興味のない福原は頑として受け付けない。


普段は患者を救うことに全力を尽くす福原が、こと父親のことに関してはまるで逆の行動を取る。

そして、患者の意思を尊重し、ときに死を近寄せることさえ厭わない桐子は欣一郎の治療を続けている。これもまるで逆の行動だ。


桐子が欣一郎の治療を懸命におこなっていたのは、桐子が患者の意向を最後まで汲みたかったからだ。そして、それができなくなったことで、患者の家族である福原を救おうとしていたのだ。

桐子は福原を救おうとしていた――その事実に福原は桐子が懸命に記録していた父親の記録を読み、自分が父親に生きてほしいという願いを持つことに気が付かされた。


認知症の原因が脳手術によって治る可能性があることを知り、自分がメスを持つことを決めた福原。

手術は無事に成功した――



だが、その後に新たに脳梗塞が見つかり欣一郎はすぐに亡くなってしまった。

それでも福原はこの出来事を通し、最後にはわだかまりが解けていた。


ラストシーンは本編を象徴する雨の中、ひとつの傘に入って話をする桐子と福原がお互いを認め合ったことを示唆し、やがて雨が晴れたことでふたりの未来が明るいたしかなものになったことをもイメージさせる。


タイトルの『君』は桐子と福原にとって、それぞれ相手のことを指しているのだろう。


方や大病院の院長。方や寂れた古いビルに居を構える開業医。

道は分かれたが、お互いがお互いのことを尊敬し合うふたりには、その後の輝かしい未来が約束されているといっても過言ではない。

最後の医者シリーズは1作目の【最後の医者は桜を見上げて君を想う】も読みました。

1作目の『君』は音山医師のことで、2作目の『君』は桐子医師と福原医師それぞれのこと。

患者の死とそれまでの生き方に人生が詰まっていて、ふたりの医者による考え方の対立や葛藤が圧倒的な心情描写で描かれているのが特徴的です。

患者の闘病に伴う描写も精密で、2作目においてはHIVに感染した患者の心の動きや周囲の人の反応なども極端にわかれ、知識や情報によっては極端な結果になってしまう現代に警笛を鳴らしているように感じました。

認知症になった患者が、すべてのものをどう感じ、どう受け止めているかなどは実際にならないとわからないことが多く、欣一郎の視点で描かれる迷いや記憶が連続しないことなどは圧倒的なリアリティを感じさせてくれます。


1作目では病院を舞台にしてふたりの対立が特徴的で最後には道が別れましたが、2作目では異なる立場で始まり3組の患者を通してお互いに歩み寄り、最後にはお互いを認められるところまで行き着いています。

異なる立場でも、目指すところは患者が救われることという部分では同じであり、その手段が違っていただけというのが後半に向けて怒涛に描かれるさまは圧巻で、思わず上下巻一気読みをしてしまいました。


あとがきがないので下巻の裏面に書かれている『完結編』が、【雨上がり】シリーズの完結編なのか、【最後の医者】シリーズの完結編なのかがわかりませんが、ふたりの道が繋がったあとにどうなっていくかの今後も見てみたいですね。


【最後の医者】シリーズは、心を揺さぶるストーリー展開と心理描写が鋭く、先が気になってどんどんと読み進められるので、まだ読んでいない場合はネタバレを見たあとでも充分楽しめると思います。


コミカライズ、そして映画化も予定されているので、自分の好みに合わせた媒体で桐子と福原の心の成長物語をたのしんでください。

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