本屋で平積みにされていた山中恵美子さんの『瞬読』がとても気になった。
まず手に取ってみて、パラパラっとまえがきとあとがきと著者近影を見て、帯のあおりに「本当かなぁ……」と思いつつも、そのまま印象だけで買うことにしてみた。
結果としては「効果はありそうだけど、速読の域を超えていないのでは?」というのが正直な感想。
難点だと思ったのは、イメージの変換という行為が必要な時点で薄々感じていたのだけど、イメージにすぐに変換できない本がどうやっても速く読めないところだ。
速読にも、まずまえがきとあとがきと目次だけを読んで、それから通しでキーワードを拾って最後まで飛ばしながら読んで、さらにページ単位でキーワードを拾いながら読むという『高速大量回転(KTK)法』という読み方がある。
脳に情報やキーワードのストックがあることで、同じ本なら読む速度が上がることを利用した読書法だ。
『どんな本でも大量に読める「速読」の本』に書いてある再現性のある手法であり、瞬読のQ&Aの一部では同じようなことを言っている。
速読じゃなくても「同じジャンルの本を5冊読んだらもう専門家だ」という実際に効果が出る読み方もある。
同じジャンルの本を固めて読むことで、脳内に情報や単語のストックが溜まり、あとで読む本ほど理解がしやすくなるという仕組みはKTK法と同じ。
1冊目に読んだ本に戻って読み直せば、1回目では気づかなかったところまで読み込めるようになっているから効果はすぐに実感できるはずだ。
つまり、速く読むにはどうしてもこれから読む本の知識がある程度必要だというのは既知の事実ということだ。
瞬読の話に戻そう。
この本で肝となるのが『右脳読み』と呼ばれる読み方となる。
ランダムな文字列を脳の補完でイメージ化したり、長めの文章からキーワードを拾い上げて瞬時にイメージを作り記憶するという流れとなる。
文字で覚えるよりもイメージで覚えるほうが記憶に残りやすく、忘れづらく思い出しやすいという脳の特性を利用している。
たとえば、昔の歌は覚えているつもりでも、メロディは簡単に思い出して最後まで「ふふふーん」か「ラララー」とか歌えるのに、歌詞は曖昧だったりする。
音もまた記憶に残りやすい現象だから、思い出す場合は絵や音のほうが詳細に思い出しやすいのだ。
文字は左脳で管理、イメージや音は右脳で管理。
だから、イメージ化が得意な右脳で本を読む『右脳読み』をすることで、瞬時に本を読むこともできるし、一度読んだら記憶に定着して忘れづらいという帯のあおり文句へと繋がる。
『1冊3分で読めて、99%忘れない読書術』
実際に1冊3分じゃなくても30分、あるいは15分で読めたらどんなに幸せなことだろう。
純粋に読める冊数が増えるのもたのしいし、ノウハウが貯まるスピードも早くなる。
右脳を鍛えれば情報処理の速度も上がるので、日常のあらゆるものがスピーディーに処理できるようになる。人生の持ち時間が増えるというのも魅力的だ。
瞬読は専門の研修もおこなっているので、本だけではイマイチ掴み切れないという場合は体験会に参加して瞬読のエッセンスを身につけるという方法もある。
瞬読は4章構成となっている。
→ 1章が速読との違いや瞬読の前提。
→ 2章は瞬読のトレーニングについての解説。
→ 3章と4章は約90ページに渡り瞬読トレーニングのドリルが掲載。
過去に速読に失敗した人もターゲットとしており、よくある速読の失敗方法が載っているので思い当たるフシがある人もいると思う。
眼球トレーニングや、焦点をずらしてぼんやりと眺めるように見るなど、目を酷使するものが速読に多いので続けられなかった人でも、文字をイメージにする変換力を鍛える瞬読なら続けることはできるような気がしてしまう。
また、瞬読にはひとつ大きな特徴がある。
ただ速く読むだけではなく、ちゃんとアウトプットもするところだ。
速読も斜め読みや飛ばし読みなどで、読む速度が早くても中身をちゃんと覚えているかというと実際はそうでもないケースもある。
瞬読はイメージへの変換で記憶に定着させるので、文字で覚えているわけではないのでエッセンスは大量にインプットできる。
3分で読んだ本に対し、1時間くらい原稿用紙数枚に渡る内容のあらすじを書き出すこともできるというのはかなりの魅力を感じる。
結局本を読むのは自分への投資であり、その投資を効率的にしたいから速読や瞬読に手を出すのだ。
ただ読むだけじゃお金の無駄になる。適切なアウトプットができるのなら、たくさんの本を高速で読むことの意義は大きい。
瞬読をマスターすることで得られるメリットも大きいので、速読と別次元ってほどの違いまでは出ていないとはいえ、やらないよりはやったほうがマシだろう。
瞬読にしろ速読にしろ、この手の特殊な読み方を求めるのは自己変革要望の高い人達のはず。
かくいう自分もそうだ。
現状をなんとかしたいから、今日よりも明日の自分をより良くしたいから。
新たな知識や知恵を求めて本を読む。
とはいえ、本をとてもじっくりと読んでしまうスタイルなので、たくさん本を買っては積ん読になってしまい、ほしい本があってもノータイムで買うことができないこともある。
瞬読や速読を身につけて、1週間に何十冊も本を読めるのであればそれに越したことはない。
本屋での出会いはとても大切。
1週間空けただけで、次の瞬間には平積みだった新刊はどこかに棚に収まって探しづらくなっているかもしれないし、売れずに返本されているかもしれない。
もしその本が自分の人生を変える1冊だったとしたら?
どの本がどう響くかなんて個人差の大きい話。
ベストセラーにはまったく興味がなく、誰も読まないような本に興奮するという人もいる。
平積みの本からしか買わない人だっている。
お金が許す限り、読書家は本を読み続ける。自分がほしいと思った本は買い逃すことなく読みたい。
瞬読や速読はその望みを叶えてくれる理想的なツールなのだ。
ツールなので、使い方が大事。間違った使い方では効果が出ない。
そのために、瞬読や速読の本を読んでちゃんと体系だって学ぶ必要がある。
瞬読の煽りである『1冊3分で読めて、99%忘れない読書術』を身につけることができたとしたら、その後の人生が好転する姿がとてもイメージしやすくなっていることは想像にかたくない。
本を読めば必ずお金持ちや成功者になれるわけではない。
でも、お金持ちや成功者には読書家が多い。
まったく本を読まない人生を選ばなかったあなただ。
瞬読でも速読でもどちらでもいいので、今よりも1文字でも1行でも1ページでも1章でも1冊でもいいから速く読めるようになるのにためらいを持つ必要はない。
合う合わないは当然ある。
でも何事も試してみないことには効くか効かないかもわからない。
瞬読は速読と変わらないのか。
それとも瞬読という新しい読み方なのか。
自分は何回か瞬読のトレーニングを繰り返し、瞬読✕速読という読み方にたどり着く予定だ。
すばやく読んで忘れない。
インプットしてアウトプットする。
まさに、今ここで本に対する感想(レビュー)を書いていることそのものの技術が伸ばせる話だ。
今後も繰り返し繰り返し瞬読をトレーニングすることで、1文字でも速く多く読めるように努力し続けるだけだ。
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