『1日1問! 面白いほど地頭力がつく思考実験』(著:北村良子 発行:PHP研究所)は、自分本来の考える力(地頭力)を使って、頭の中だけでおこなえる思考実験のための「問い」がいくつか掲載されている本だ。
設定として突飛なものもあるが、様々な立場を前提とした問いに対して、論理的に考えて「意見」や「答え」を導き出す流れとなっている。
問いに対しては参考としていくつかの「意見」とその「理由」も書かれている。
「自分と同じ考え方だなぁ」
とか、
「こんな考え方もあるのか」
または、
「この立場で考えたらたしかにそうだな」
という形で、
自分で考えた「意見」の理由の答え合わせや、新たな考え方の気づきを与えてくれる。
この本の目的は「常にこれで正しいのか?」を考える力を身につけることだ。
本来持っている自分自身の素直な考え方を「問い」に答える形で明らかにし、異なる立場でも考えてみて別の「意見」を導き出す。
2つ以上の異なる「意見」をフラットな視点で考え、どちらが合っているか間違っているか、または別の考えもあるのではないかと思考を巡らせることができれば本書をより良くたのしむことができる。
『ひとりディベート』
そんな言葉がもっとも適切だと感じた。
たとえば1問目として用意されている「AIは人を愛することができるか?」では、AIが人と同じような肉体を持ち、外面での区別がつかないAI人間が存在する世界が前提条件となっている。
AI人間は外面も反応もまさに”人のそれ”であり、知らされない限りAI人間だとはわからないという中で、以下のような問いが登場する。
Q.もし自分の恋人がAI人間だったとしたら、それがわかったときにそのまま愛し続けることができるのか?
この問いに対して思考を巡らせ、考えた末に自分の「意見」とその「理由」を導き出すのだ。
答えはひとつではないし、その意見を導き出す理由もひとつではない。
あくまで回答例でしかないが、本書では3パターンの「意見」と「理由」が載せられている。
A.別れる
自分が愛していても、AI人間はプログラムで反応しているに過ぎない。そこに愛情はなく、恋愛関係はそもそも成立していない。
A.見た目も反応も人である以上、AI人間は人と同じだと考える
人とAI人間は区別がつかず、自分の愛に対してAI人間も愛を返してくれる。つまりもう”人”であり、区別をする理由はない。
A.プログラムであってもそれはAI人間の”心”だと考える。
心を持つなら人のしての愛ではないが、AIとしての愛を持っている。
恋愛関係は成立している
AI人間のアルゴリズムによるプログラム的な反応をどう考えるか。
その視点や考え方によって自分の「意見」は変わってくる。
答えはひとつではないため、どれが正解というものではない。
さまざまな視点や立ち位置から物事を深く考え、論理的に答えを導き出す――その思考実験で地頭力を鍛えることが肝心なのだ。
『1日1問! 面白いほど地頭力がつく思考実験』を読み、さまざまな問いに対する「意見」を考えることで、以下の力が身についていく。
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「発想力」
「いろいろな視点から見る力」
「論理的に考える力」
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本書の流れは「問い」に対して何パターンかの「意見」と「理由」が例示される流れになっているが、途中で視点の枠組みの変更(リフレーミング)が行われるケースも用意されている。
議論が行き詰まる原因に”視点が近すぎる”場合がある。
議論を進めるためには本質ではない部分をシンプルに置き換えて、本質がどこなのかを明確にして再度考え直すことで「意見」を導き出すことができる。
本書後半では『ゼノンのパラドックス』から4問の問いが例示されている。
すべてに共通しているのは”ごく狭い範囲を見ている限りはパラドックスは解消しない”こと。
有名な『アキレスと亀』も、文字だけを追うとアキレスは亀にいつまで経っても追いつけないと納得しかけてしまうが、”アキレスが亀に追いつくまでをずっと見ている”ことに気づけば、その矛盾から抜け出すことができる。
今後の人生において『前提がおかしい議論』に巻き込まれることがあるかもしれない。
そんなときは視点や立場、時間や空間に変化を与えたりシンプルに考え直すことで、ずっと停滞していた考えが一気に解決に向かうことができるようになる。
ごく狭い範囲で考えている内は思考の幅が広がらない。
本質を見出し、本質について考えることで解決の糸口を見つけ出すことが大切だ。
思考実験は頭の中だけでおこなえるので時と場所を選ばない。
『1日1問! 面白いほど地頭力がつく思考実験』には全部で20個の問いが用意されている。
いくつかの「問い」を頭の中にストックしておいて、ふとしたときに思い出して『思考実験』であらたな「自分の考え」を見つけて遊んでみてほしい。
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